グラスゴー出身のフランキー・ミラーのCDが再発されている。
今のところデビュー作の「Once In A Blue Moon」から「Double Trouble」までの5枚がスケジュールされている。
イギリスのいわゆるファンキー・ロックとして、ブルー・アイド・ソウルとして、バドカンなんかが天下を取っていた時代のロックファンには忘れられない人である。
どれどれと「The Rock」のトラックリストを見てみたら ”Sail Away” が入っていない。
自分が持っている最新のThe Rockは2003年のEagle盤で、そこにはRandy Newmanのこの曲のライブバージョンが入っていた。「Live at Rockpalast」にも入っているので日本盤にわざわざ収録することはないという判断だったのかも。
ランディ・ニューマンの「Sail Away」収録のこの曲の歌詞は、
アメリカは良い所だよ、食べるものもいっぱいあるし、トラもライオンも毒蛇もいないよ、みんなハッピーに暮らせるし、それにアメリカは自由の国なんだ!
とアフリカの人々を騙して船に乗せる奴隷商人を歌ったもの。
それをアフリカ〜イギリス〜アメリカという経路の中継地となったイギリス人が唄うのだから、その意味を考えざるを得ない。
(本当に中継貿易で儲けたのはリヴァプールなんだけど)
こういうカバーするのにも勇気がいる歌を1975年にきちんと演奏していたフランキー・ミラー。アメリカへ送られたアフリカの人々の子孫からブルースやソウルが生まれ、それがまたイギリスに戻って自分に影響を与えたことをきちんと理解していないとカバーしないだろう。
単なる歌のうまいシンガーではなく、やはり当時のミュージシャンはきちんと筋を通していたんだなと思うし、それを伝えるためにもSail Awayはボーナストラックに収録して欲しかった。
本家ランディ・ニューマンの演奏は例えばこれ。
なんとファームエイド(第一回)での演奏である。
いかにもカリフォリニアのお気楽人みたいなアロハを着て、見かけは典型的ユダヤ人、そんな人がファームエイドで農家のためにアメリカの暗部の歌を唄う。どこまでも皮肉が効いているシチュエーションである。