ボブ・ディランの裏方 G.E.スミス

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NHK-BSで深夜に「Master of Changes – ディランは変わる」の再放送をしていて、その中で芸能生活30周年記念コンサートの部分もあったので忘れないうちに書いておこうと思う。

今ではすっかり名前も聞かなくなってしまったギタリストのG.E.スミス。

最初はホール&オーツのバックバンドの変態ギタリストとして名を売って、80年代はかなり重宝されるギタリストだったはず。
このディランの芸能キャリア30周年記念コンサートのバックバンドがブッカーT&M.G.’s にジム・ケルトナーとアントン・フィグ、それにG.E.スミス。

G.E.スミスはミュージカルディレクターという立場でも参加しているのだが、その彼の面目躍如たる大活躍を見れるのが ”My Back Pages”

ジョージ・ハリソン、トム・ペティ、エリック・クラプトン、ニール・ヤング、ロジャー・マッギンがステージ上に勢揃いしてギターを弾き歌を歌うという豪華な場面だが、いつ見てもG.E.スミスの勇姿に目が釘付けになってしまう。

別に凄いギターを弾くとかそういうことではなく、他の大物ミュージシャンたちの介護ぶりが凄いのである。

トム・ペティのボーカルがテンポがずれてると感じたらそっちに合わせるよう的確に指示を出し(それもジム・ケルトナーに!)、

ロジャー・マッギンとクラプトンのコーラスに顔をだすのかと思うとそうではなくてちゃんと音が合ってるか背後から確認しに行ってるし。

クラプトンやジョージがソロを取っている時は、”ああこの人達は安心だな” と思ったのか明らかにほっとした顔をしているし、

ディランが歌う番になるとちゃんと背後から近づいて、”先生、つぎ出番です” という感じで合図を出して、しかもそのタイミングで後ろ下がるクラプトンとぶつかりそうになると慌てて道を開け、しっかり腰を下げて ”すいません先生! こちらへどうぞ” とかやってるし。

昔出回っていたバージョンではディランがリハーサルと違って勝手に崩した歌い方をするので思わず ”先生しょうがねぇなぁ” と苦笑いするのだが、最近リリースされたDVDではその場面が無くなり、しかもディランのボーカルも差し替えられているようだ。先生ズルい。

ニール・ヤングのソロが近づくとステージを端まで移動して ”大将、ではお願いします” という感じで指示を出しているし。

当時G.E.スミスは40歳くらい。決して若手ではないが、他のミュージシャンと比べれば10歳近く若いわけでどうしてもこうなってしまうのか。

とにかく彼にとっては気の休まるヒマもない5分間で、終わった時はどっと疲れが出たのではないだろうか。

また、この気配り、気の遣い方を見てとても他人とは思えないと感じる日本のサラリーマンの方も多いのではないだろうか。

この “My Back Pages” はディランのボーカルがとか、ニール・ヤングのソロが凄いとか、さすがの安定感のクラプトンとか、いろいろ見どころがあると定評だが、G.E.スミスがいなかったらここまできちんとした演奏にならなかったのではないかと。個人的にはG.E.スミスの貢献が最大の見所ではないかと思っている。

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