Linda Thompson / PROXY MUSIC
今週の新譜をチェックしていたらあまりに気になるジャケットを見つけてしまった。
あまりにストレートなパロディのタイトルとアルバム・ジャケット。
最初はジョークアルバムかと思ったがアーティスト名を見ると大御所だしもしかしたらと思ったら、、まさにそのアーティストご本人の最新アルバムだった。
▲これがそのジャケット。アルバムタイトルは「PROXY MUSIC」。
Roxy Music(ロキシー・ミュージック)の1972年のデビューアルバム「Roxy Music」のパロディーである。
ジャケットにアーティスト名がないが、オリジナルのカリー・アン(Kari-Ann)と同じ妖艶なポーズを決めているのは御歳77歳になるリンダ・トンプソン(Linda Thompson)。
ギタリストのリチャード・トンプソンとの夫婦デュオ「Richard & Linda Thompson」で名高いあのリンダ・トンプソンの最新アルバムということだ。
Roxy Music / ROXY MUSIC
▲これはオリジナルのカリー・アンの方。当時24歳のトップモデル。スタイリストはあのアンソニー・プライスである。
▲YouTubeにはこのアルバムの1曲目「The Solitary Traveller」のVideoが上がっている。
この画像に全身が写っているのは「Roxy Music」のジャケットがゴートフォールカバーで、開くとアン・カリーの全身ポーズになるのを踏襲しているから。
さすがに首から下はダブルを使った合成だと思う(リンダ本人だとは思いたくない)。
▲これはオリジナルのゲートフォールドを広げたところ。
ちなみにカリー・アン(Kari-Ann Muller)はその後、クリス・ジャガーと結婚し、今も仲良く暮らしているらしい。
言うまでもないがクリス・ジャガーとはあのミック・ジャガーの弟。つまりミック・ジャガーの義妹ということになる。
スポンサーリンクリンダ・トンプソン
リチャード&リンダ・トンプソンは70年代から80年代初頭にかけて6枚のアルバム(どれも最高)を残しただけでデュオを解消してしまう(つまり離婚した)。
リチャードの方の女性問題が原因らしく、それもあって70年代のリンダはステージでのパフォーマンスとは裏腹にバックステージではいつも大荒れ。セックス・ピストルズより酷いと言われるくらいに楽屋をめちゃくちゃにしていたそうだ。
そんなメンタル的に辛いこともあってか発声ができなくなってしまい、80年代90年代のリンダはほとんど録音を残していない。2002年の「Fashionably Late」が久しぶりの新録音だった。
そして2013年の「Won’t Be Long Now」リリース後、まだ発声障害が再発してしまったそうだ。
PROXY MUSIC
そんな発声障害で歌うことができないシンガー、リンダ・トンプソンの最新作が「PROXY MUSIC」。
PROXYというのは代理人みたいな意味で、つまり歌うことができなリンダの代わりにゲストシンガーを迎えてのソロアルバムということである。
アルバムタイトルがPROXY MUSICなので、すぐにROXY MUSICのパロディをやろうということになったのだろう。
あんな妖艶な姿のジャケットだが、内容はいたって真面目。娘のKami、息子のTeddy、さらにRufusとMarthaのWainwright兄妹(ラウドン・ウェインライトIIIとケイト・マクギャリグルの子供)などがボーカルで参加し、元夫のリチャード・トンプソンもギターで参加している。
ボーカルがリンダでないだけで曲はこれまでリンダが書いてきたコンテンポラリーなブリテッシュトラッド。
そして娘のカミ(Kami)が歌う「Solitary Traveller(孤独な旅人)」がとにかく胸を打つ。
I had a voice clear and true
I chided and scolded and lied about you
Never held my wicked tongue
And now that voice is gone
こんな歌いだしで始まり
Lonely life, where is thy sting
Lonely life, there’s no such thing
Here’s a health to the solitary traveller
To the solitary traveller
というサビの歌詞。
明らかにリンダの人生を振り返るものだが、でも息子やかつて愛した男性に囲まれ孤独な人生などないと言い切るところが素晴らしい。
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