サイゴンの社会主義キッチュなプロパガンダポスターたち

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一時期、仕事でベトナムのホーチミン市(HCMC)を訪問することが多かった。
そのホーチミン(サイゴン)市内で見かけた社会主義キッチュなプロパガンダ絵画を紹介したい。
月曜日の朝に現地に着く便なら空港からそのままオフィスに向かい仕事を始められるて便利なのだが、そうした需要が多いのでチケット代が非常に高い。そこで、日曜日の朝に到着する安い便をよく利用していた。一泊余計になるがチケット代を考慮するとこちらの方がトータルでは安い。
でもなにせ朝6時前に着いてしまうのでアーリーチェックインすらも早すぎることが多い。そんなときはいったんホテルに荷物を預け、朝からサイゴン観光という名の時間つぶしである。
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▲空港からホテルに向かうタクシーの中から見かけて気になっていた大看板。
レーニンの看板なんてさすが社会主義国は違うなぁと思っていたが、近くでよく見るとロシア革命(十月革命)100周年記念ということらしい。(2017年の話です)
この看板のイラストはボリショイ劇場前で演説するレーニンの写真を基にしたものだろう。
本来はこの演説台の下にはトロッキーがいるのだが、その後のソ連の歴史ではトロッキーという人物そのものが居なかったことになっているので、写真もそのように修正されたらしい・・・という説で有名な絵面。
これはまた別の場所に掲出されたいたポスター。
こちらもレーニンとクレムリンを使った十月革命100周年。
ホーチミンという街にいるとつい忘れてしまうが、ベトナムは1976年以来「ベトナム社会主義共和国」という社会主義の国である。
このホーチミン市の旧名は「サイゴン」。旧南ベトナムの首都であり米軍が駐留していたし、映画などでは資本主義と腐敗と不正の巣窟で享楽的な街みたいなイメージで描かれることが多かった。実際今もハノイと比べると社会主義の国的な雰囲気はあまり感じられない。

▲さっきの黄色いレーニンのポスターはノートルダム教会の近くの壁にずらっと掲出されていたのだが、そのポスターがどいつもこいつも社会主義的、ソヴィエト的なプロパガンダ絵画ばかりで興味深い。

芸術はアヴァンギャルドとキッチュに向かうという話があり、これらはそのキッチュ路線に行った典型である。こうしたキッチュなプロパガンダ絵画は「社会主義キッチュ」というらしい。ロシア人は「ソヴィエトキッチュ」と自虐的に称することもあるようだ。

ロシア・アヴァンギャルドはその裏表として旧ソ連のプロパガンダポスターがあるのだが、ベトナムのアヴァンギャルドはまだまだ非常に少ない。

このホーチミンおじさんとそれに感謝しているらしい健気な小学生の絵の表情、そのポーズ。いかにもプロパガンダポスターらしいが、それが21世紀の今でも使われていることにある意味びっくり。
こんなの北朝鮮くらいにしか残っていないのかと思っていたが。

顔の造形や色使いから、もしかしたらベトナム人が大嫌いな中国のそれをコピーしてきたのかもしれない。

▲これはどうも文化系、音舞楽曲系のポスター。

ベトナム語がまったくわからないのが悔しい。

▲これは分かりやすい。
発展する街並み、平和のシンボルである白鳩。
国の成長と平和を見守ってくれるのは頼もしい兵隊さんたちですね。
この緑の制服の国家公務員に最初に出会うのは空港の入管だが、さすが社会主義国の国家公務員様は違いますねと嫌味を言いたくなる仕事ぶりである。
あとこのポスターが貼られている場所の近くには郵便局もあるのだが、誰も来ない窓口にずっと座って何もしていない係員たちも、あれもきっと社会主義国の国家公務員。
きっと、計画に沿った数の郵便を出さない一般国民が悪いと考えながら座っているのだろう。

▲これはいろんな職業の人のおかげです、みたいなポスターかなと推測。
下段真ん中のお兄さんと上の兵隊さんの顔が同じなので作者が同じなのかもしれない。

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▲これもホーチミンを讃えているであろうポスター。
もしかしたら腕を上げる角度もきちんと定められているのかもしれない。

ちなみにシンプルなイラストに対してヒマワリは実写。要するにコラージュ作品である。

▲こちらのカップルの男性の腕の角度もさっきとほぼ同じ。
社会主義国だけに、腕を上げる角度まで法律で決まっているのかもしれない。
(単にイラストを反転させて使い回しているという説もある)

▲これはベトナム共産党の92周年?
ホーチミンと赤色からの推測だがたぶん間違ってないと思う。
(ホーチミンがベトナム共産党の前身組織を立ち上げてかた92周年でした)

▲これは明るい家庭はホーチミンのおかげですみたいなプロパガンダだと思われる。
日本で行ったら銀座のど真ん中みたいな場所にもこうしたプロパガンダポスターがでっかく掲げられている。
これは顔の造形などベトナム人と分かるので、ベトナムオリジナルポスターだと思う。
▲これも明らからにベトナム人。
水兵さんが双眼鏡で見張っている先はもちろん南シナ海である。
中国による現状変更の試みで大揉めに揉めている南シナ海であるから、さすがに中国からのコピーモノは使えない。
▲なんか良くわからない武器を持った兵隊さんや戦車など。なにせアメリカと中国という大国に勝った唯一無二のベトナム軍である。
でもポイントは右上のホーチミンの横顔かな。
外国の敵と戦った歴史・・・つまりこれも南シナ海を意識しているのではないかと。

▲個人的にはかなりお気に入りの構図。

手前はクレムリンとレーニンの十月革命100周年モノ。

向こうに見えるのは旧南ベトナムの大統領府。
その対比がうまく撮れたなと。

▲その旧南ベトナムの大統領府全景。
この日は修学旅行(?)の生徒・学生たちが列をなしていた。

1975年に北ベトナム軍が戦車でここにやってきて南ベトナム政府が降伏。ベトナム戦争終結の場所である。

アメリカ人観光客が集まる場所でもある。

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アメリカ人観光客とはいえば、サイゴンの国際空港であるタンソンニャット国際空港の入管にでは毎回数十分単位で並ばされて閉口している。

ASEANの列か日本人が多い列に並べば比較的早く進むように感じるのだが、最初はアメリカ人が多く並んでいる列を選択して大失敗してしまった。

世界中どこでもアメリカ人と日本人は比較的あっさり入管を通過できるという経験則だったのだが、ベトナムだけは違った。

列が進んでから気が付いたのだが、アメリカ人はビザがないと観光であっても入国できない! しかも、ビザやパスポートのチェックも入念で一人ひとりの審査にいちいち時間がかかっている!

まぁ歴史的経緯を考えるとアメリカ人への扱いは当然だが。

世界のほとんどの国と異なり、ベトナムの入管ではアメリカ人が少ない列を選ぶのが良いので憶えておきたい。

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