Jackie And Edna - 英国の至宝的SSWケヴィン・コインとピピロッティ・リスト

 スイス出身のビデオ・アーティストでパフォーマンス・アーティストでもあるピピロッティ・リスト(Pipilotti Rist)。

彼女の30年にわたる活動を網羅した個展「Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-」が国立京都近代美術館と水戸芸術館で開催されていて、今は水戸芸術館の現代美術ギャラリーで開催されている(2021年10月17日まで)。

オノ・ヨーコからの影響を受けているピピロッティ・リストの映像作品の中には、ビートルズの”Sexy Sadi” を使った 「Sexy Sad I」という作品があったり、やはりファンでもあるジョン・レノンの ”Happiness Is A Warm Gun” が歌われる「I'm Not The Girl Who Misses Much」という作品があり、どちらも今回の個展で上映されている。
ピピロッティ・リスト本人はもととも音楽畑出身であって、本人の曲を使っている作品も多いので残り少ない会期だが水戸まで行って個展と上映作品を観て欲しい。

先日鑑賞に行ったのだが朝の11時に着いて美術館を出るのは18時を過ぎていた(途中1時間ほどランチ外出したが)くらい、ずっと居て何度も見返したくなる作品ばかりである。

そんなピピロッティ・リストの作品の中に「ジャッキーと呼ばれた(You Called Me Jacky)」という作品があり、これも今回の個展で上映されている。


この音楽なのだが、なんとケビン・コイン(Kevin Coyne)の ”Jackie and Edna”。

今ではすっかり忘れられているが70年代からカルト的な人気があり、2000年ころまでは新譜が出ればそれなり話題になっていたイギリスのSSWである。

そんなマイナーなケヴィン・コインだが80年代に入って体調と精神的な問題からイギリスを離れ、ドイツのニュルンベルクで暮らすようになる。

もともとヨーロッパで人気のあった人だからドイツ移住後は地元ドイツや近隣諸国ではさらに身近な存在になっていたのではないだろうか。また、詩人でもあり絵かきとしての才能もある人なのでアートシーンでもそれなりに活動していたのかもしれない。

ピピロッティ・リストはスイスの女性だけのバンド「Les Reines Prochaines」でも活動していて、そのバンドの1987年のアルバム「Lob Ehre Ruhm」でもこの ”Jackie And Edna” をカバーしている。なので、リスペクトするミュージシャンの、しかも自分のバンドでカバーしたこともあるということでこの曲を選んだのかもしれない。
途中で歌詞を間違えたかして苦笑している場面があるが。

さて、ケヴィン・コインだがしわがれた声でフォークブルースを歌うSSW。ただその曲やサウンドはビーフハートからアクを抜いたようでもあり、エドガー・ブロートン・バンドがアコースティックになったようでもあり、これは好きな人はハマる音である。

さらにイギリス人のようにその歌詞も分かるようになると ”英国の至宝” とまで言われるようになるわけだ。

彼のソロデビューアルバム「Case History」はジョン・ピールのレーベルDadelionからのリリース。2ndアルバムで ”Jackie And Edna”  が収録されている「Marjory Razorblade」からは永くVirginからリリースされている。

ジョン・ピールの眼にかない、初期のアバンギャルドだったVirginがずっと契約し続けた点からも評価の高さと期待の大きさが分かると思う。

実際に70年代前半には日本でも当時の日本コロンビアがけっこうプロモーションしていたように記憶している。ただあまりに玄人好みな音なので売れたのかというと・・・

とはいえ、70年代の諸作は適度なアバンギャルドさで聴きやすくなっているので入手できたら聴いて欲しい。元スラップ・ハッピーなどで知られるダグマー・クラウゼとのデュエット作「Babble」なんていうアルバムもあるが、これはケビンのアルバムにダグマー・クラウゼがゲスト参加したもので音はいつのもケビンのアルバムと同じである。