トム・ジョーンズの新作「Surrounded by Time」はメッセージ性溢れる傑作

 トム・ジョーンズ(Tom Jones)の新作「Surrounded by Time」がとても良い。

トム・ジョーンズというと声がでかく(これはよくジョークにもなってる)、ベガスのディナーショーなどもやっているマッチョなポップシンガーというイメージがあると思うが、1999年の「Reload」を転機に、ポップだけどしっかり時代のサウンドも取り入れ、時にメッセージ性ある曲もやるアーティスティックなロックシンガーとなっている。

基本はポップなんだけど、ルーツロック的なサウンドだったり、しかもカバー曲のセンスが抜群なので普通に歌が上手いボーカルがいるロックバンドとして聴けてしまう。

そのトム・ジョーンズの新作「Surrounded by Time」。

今回も選びぬかれたカバー曲ばかり。


1曲目がスピリチュアルな "I Won’t Crumble With You If You Fall"
オリジナルはワシントンDCのBernice Johnson Reagonの1975年の傑作「Give Your Hands to Struggle: The Evolution of a Freedom Fighter」に収録されている曲.

60年連れ添った妻が亡くなる直前、取り乱すトム・ジョーンズに ”Don't Fall with Me" と声をかけたことにインスパイアされた曲だという。


そしてアルバムの最後はテリー・キャリアの ”Lazarus Man"。テリー・キャリアの復活作「Timepeace」収録曲。

これは結構サンプリングされているので無名曲ではないが、”ラザロ” と ”復活” の暗喩が何を指しているかでいろんな解釈ができる曲である。

他には例えばトッド・スナイダーのカバー。"Talking Reality Television Blues"


思いっきりドナルド・トランプとそれが支持される背景をバカにする歌。
締めの一節 ”Reality Killed by a Reality Star" にアメリカが大事にしてきたものを壊された悔しさがにじみ出ている.

他にはディランの ”One More Cup of Coffee” やトニー・ジョー・ホワイトの "Ol’ Mother Earth" なども。

トニー・ジョー・ホワイトを聴くとこの二人はそもそも声が似ているんだと気がつく。ウェールズ人だけど昔からソウルフルな歌を歌っていたトム・ジョーンズ、英国らしいブルー・アイド・ソウルなシンガーとはちょっと違うソウルを感じさせてくれる。

そして一番びっくりしたのがウォーターボーイズの ”This Is The Sea”


ウォーターボーイズのオリジナルもドラマチックだが、それに輪をかけてドラマチックに仕立てている。

ウォーターボーイズ/マイク・スコット好きにとっても大納得のカバーである。

トム・ジョーンズは1940年生まれだからジョン・レノンなんかと同い年、つまり80歳なんだけどまだまだちゃんと歌える。今回のアルバムを聴いてなんか遺言ぽいなと感じないこともないが、体力の続く限り歌い続けて欲しいものだ。