Valkyrie

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トム・クルーズ主演の「ワルキューレ」を観てきました。

上映時間が「ベンジャミン・バトンの奇妙な人生」と10分重なっていたがワルキューレ上映前の予告編が10分なので走れば間に合う!
ということでベンジャミンのエンドロールが終わるや否や深夜の六本木ヴァージン内を大移動(大袈裟)して、無事ミッドナイトショーのはしご鑑賞に成功しました。

「ワルキューレ作戦」というのはヒトラー有事の際の緊急対応作戦の名称で、「バルキリー指令」あるいは「ヴァルキリ作戦」あるいは「ヴァルキューレ計画」等々の名称でよく知られているものですね。
この映画の解説の中には「ヒトラー暗殺計画であるワルキューレ作戦云々」と書かれているのもあるようですが、ヴァルキューレ計画は暗殺計画ではありません。ヒトラー暗殺後の政権掌握にヴァルキューレ計画を応用しようというシュタウフェンベルクのアイディアを誤解しているものと思われます。

ヒトラーが乗るユンカースJu 52(3発と波形のジュラルミン外装)、シュタウフェンベルクらの乗るハインケルHe 111(双発)とかはレプリカとしてはよく出来ていました。空撮ショットも面白かったし。
エンドロールにはパンサー戦車をレンタルしたと書いてあったけど、どこに出ていたのかよく分かりませんでした。
でもストーリーは概ね史実に沿っている(というかこれまで読んだフィクション等で知っているものと致命的な相違はない。ただし出るべき人が出てこない)し、歴史/軍事考証もハリウッド的にはそれなりかな。

ただ豪華キャストにギャラを使い過ぎたか(トム・クルーズ、ケネス・ブラマー、ビル・ナイそしてテレンス・スタンプ)、金のかかりそうなシーンはあまり多くないですね。
それ以外の暗殺/クーデーター計画の部分の描写が多いのだけど、前述のとおり普通の人には暗殺計画とその後のクーデータ計画の切り分けがよく分からず、そのため誰が何の役割なのか、分かり難くなってしまったのではないかと思います。たぶん「よく分かんない」という評価が今後噴出すると思います。
ナチのならずもの(リーアム・デブリン談)、ゲーリング、ゲッペルス、ヒムラーはいかにもステレオタイプな描き方だけど、これはまぁそれ以上は描写できないもんな。
しかしサスペンス、アクションについては決定的に欠落しているのもマイナスポイントかと。派手な予告編やTVキャンペーンで期待して観に行くとガッカリ度が高いと思われます。

あと、映画の冒頭では英語の字幕に英語のナレーションが被さるものの、トム君を含む登場人物がドイツを喋り、しかも字幕が戸田奈津子。
ドイツ語のセリフを聞きながら戸田の字幕を読むのかよ!?
一瞬先が思いやられましたが、その後のセリフは英語でした。
なっちゃん、予想とおり軍事用語もからきりだめなので、気になる人はその部分だけでもセリフを聞こう!
もうひとつ、これはなっちゃんの責任じゃなくてハリウッド映画というせいもあるけど、「狼の巣」というのはボクたち普通のひとにはそれでいいんだけど、こっち系のマニアックな人は慣れ親しんだ「ヴォルフスシャンツェ」という呼び方、表記をして欲しかったでしょうね。

とはいうものの、別に無理して観に行く映画じゃないよ、これ。
監督がなぁー、ブライアン・シンガーだからはっきり二流以下だし、引き出しの少なさとか歴史の解釈、その映像表現などまったく見るべきものなし。BBC辺りのドキュメンタリー部門、いやNHKの「その時歴史は動いた」スタッフに担当してもらえば、もっとメッセージが伝わる緊迫感のあるものになったと思います。
それにロンメル元帥(関与を疑われて自決を強要)、カナリス提督(ヴァルキューレ計画の必要性を訴えた人物。常に英国との関係を疑われている)に全く触れられていないのはどういうことかとか、通信本部でエニグマが使われていないのはどういうことよとか。エニグマが描写されるべき場面でタイプライターのクローズアップ映像って・・・
どうもそういう陰謀史観的なものとか、ガジェットとかおっぱいには興味がないんだな、この製作スタッフは。

4年前にブッシュが再選された直後の時期にでも公開されていれば、当時の世相とシチュエーションが思い切りブラックな皮肉として効いたのかもしれませんが。

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