デニス・ホッパーは何故サバイブできたか


デニス・ホッパーが亡くなった。享年74歳。
少し前からガンであることを公表し、ボクたちは近い将来そのニュースを聞くことになるだろうと覚悟はしていたが。
なんという偶然か虫の知らせか、ちょうど家で何回目かの「イージー・ライダー」を観終わった直後に、「Dennis Hopper Died at 74」という記事が飛び込んできた。

たぶん一般のニュースでは”あのイージー・ライダーの”という紹介のされ方をするのだろうけど、デニスが多くの映画ファン、音楽ファンに慕われリスペクトされているのは、「イージー・ライダー」に続けて製作し(そして商業的に大失敗した)一連の作品、そして「地獄の黙示録」以降の、自身のキャラと重ね合わさるようなアウトサイダー人間の演技によるものだと思う。


主な出演作を列挙してみる。

Rebel Without A Cause (1955) - 理由なき反抗
Giant (1956) - ジャイアンツ
Gungight at the O.K. Corral (1957) - OK牧場の決斗
Cool Hand Luke (1967) - 暴力脱獄

The Trip (1967) - 白昼の幻想
Easy Rider (1969) - イージー・ライダー
The American Dreamer (1971)
The Last Movie (1971) - ラストムービー

The American Friend (1977) - アメリカの友人
Apocalypse Now (1978) - 地獄の黙示録
Out Of The Blue (1980) - アウトオブブルー
Rumble Fish (1983) - ランブルフィッシュ
The Osterman Weekend (1983) - バイオレント・サタデー
The American Way (1986) - アメリカンウェイ
The Texas Chainsaw Massacre 2 (1986) - 悪魔のいけにえ2
Blue Velvet (1986) - ブルーベルベット

Hoosiers (1986) - 勝利への旅立ち
Colors (1988) - カラーズ/天使の消えた街
Catchfire (1990) - ハートに火をつけて
The Hot Spot (1990) - ホットスポット
True Romance (1993) - トゥルー・ロマンス
Speed (1994) - スピード
Chasers (1994) - 逃げる天使
24 (2002)
Hell Ride (2008) - ヘルライド

ジェームズ・ディーンの弟分的な美少年時代の後その言動で干され、早すぎたアメリカン・ニューシネマ「暴力脱獄」でも存在感を出せず(というかザ・ポール・ニューマンな映画なのでしょうがないか。しかしこの邦題は... 騙されたと思って観て欲しい名画)。

しかし60年代後半には、サイケデリックでドラッギーな「白昼の幻想」、アメリカン・ニューシネマの決定版「イージー・ライダー」、失敗作ではあるけど非常にパーソナルで個人的にはなんとしてももう一度は観たい「アメリカン・ドリーマー」と「ラストムービー」。前者はジーン・クラークなどが収録されたサウンドトラックが有名。
どちらも彼の唯一の伝記「デニス・ホッパー 狂気からの生還」に製作現場のトンデモぶりが記述されていて、もしかしたらこの時点で死んでいてもおかしくなかったと思う(具体的なエピソードを紹介したかったが家中を探しても見つからなかった・・)

この頃のデニスのプライベートを知り製作された映画を観れば、彼が一般社会では受け入れられないアウトサイダーであり肥大化した自我をどう表現するか悩む一流の表現者であることが判ると思う。

普通だったらこうした人は死んでしまうもの。ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、カート・コベイン、ジェームズ・ディーン、デニス・ウィルソンなどなど。でもデニスはサバイブする。


たぶんその転機はコッポラの「地獄の黙示録」。
ここでの気の触れたカメラマン。”気が触れた”ではあるけど、アウトサイダー的にはいたってノーマルな役を演じ評価され、パブリックイメージと自身のパーソナリティー・表現手段が一致するという俳優として非常においしいポジションを確保できた。これで人間としても、表現者としても最低の状態からサバイブすることが可能になったのだろうと思う。


それ以降のデニスは無敵。


ミッキー・ロークとマット・ディロンを息子に持つ情けない父親を演じた「ランブルフィッシュ」(これもコッポラ)、 ペキンパーの遺作「バイオレント・サタデー(ロバート・ラドラムの原作は”オスターマンの週末”)、個人的には大好きな「アメリカン・ウェイ」、殺人鬼を楽しそうに演じる「悪魔のいけにえ2」(トビー・フーパー)、史上最悪のギャングを演じる「ブルー・ベルベット」(デビッド・リンチ)、クリストファー・ウォーケンと共演の「トゥルー・ロマンス」等々、アンチ権威、アンチモラルなアウトサイダーを演じ続けることになる。

70年代以降かなりのデニス・ホッパー出演映画をリアルタイムで観ているが、個人的には「ランブルフィッシュ」の最低に情けない父親役が忘れられない。
あれは自分のことだとシンパサイズする男が世界に数百万人はいるだろうな思われる、年取った元・現ダメ男必見である。


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