Red Dirt Girl


エミルー・ハリスの2000年のスタジオ作「Red Dirt Girl」。70年代中ごろはポップ/カントリーのフィールドでグラミー獲ったり、L.A.ロック人脈との交友でロック界でも有名だったりしたのですが、不毛の80年代を過ごしてしまいましたね。

 僕も70年代のエミルーは、単なるカントリー・ロックの女性シンガーくらいの感覚でいたのですが、ここ数年の尋常でない音作りはそうした評価を一気に覆しています。

 今になって振り返ってみれば、グラム・パーソンズ(ロックバンドのスタイルでカントリーをやったカントリーロックの先駆者。元バーズのメンバーでもあり、フライング・ブリトー・ブラザースの創始者。ストーンズ(特にキース)との交友でも有名。ストーンズの「Wild Horses」はグラムのことを歌った曲。1973年にカリフォルニアの砂漠町Joshua TreeにてODで死去。エミルー・ハリスはグラムのバックバンドメンバーでもあった。)の最後のパートナーは彼女だったわけで、70年代当時の彼女にしてみれば、どれだけ意識的だったかはともかく、グラム的な音を継承したいけれど状況的に思うようにできないといった感じだったのでしょうか。

 で90年代以降は彼女自身、自分こそがグラムの正当な後継者でカントリーひいてはロックの領域での表現拡大を目指そうと意識しているのでしょう。(余談だけど1980年代には数本の映画に出ているはず。僕が把握しているだけでは「The Last Waltz」例のThe Bandの解散コンサートのフィルム(あ、これは1970年代だ)。「Honeysuckle Rose」ウィリーネルソン主演。邦題は「忍冬の花のように」。)

 音の方は昔のエミルーしか知らない人が聴いたらびっくりすでしょうね。もはやカントリーではない!でも、音はカントリーじゃないけど、心はカントリー。基本的にはロックバンド編成で、特に目立つのがドローン・ギターと全体的なエコー処理。以前ダニエル・ラノワがプロデュースしていたけど、あれじゃアイルランドのバンドみたいになってしまうので、前作(?)からマルコム・バーンがプロデュースと全体の音づくりを担当しています。

 いちおう参加ミュージシャンを列挙(登場順)すると、ダリル・ジョンソン、バディ・ミラー、ブルース・スプリングスティーン夫妻、ケイト・マクガリグル(カナダの姉妹SSWデュオ「ケイト&アンナ・マクグリガル」のお姉さんの方。ラウドン・ウェインライトの元奥さんもである。というより最近ではルーファス・ウェインライトのお母さんと言った方が有名かも。)、ディブ・マシューズ(地道なライブで人気を上げてきたデイブ・マシューズ・バンドのリーダー。僕、このバンドの良さがぜんぜん判りません)等々。曲はほとんどエミルー自作だけど、共作者にはロドニー・クロウェル(テキサス出身のSSW、プロデューサーその他もろもろ。元エミルー・ハリスズ・ホット・バ ンドの主要メンバーでもあり、80年代以降は自身のアルバムを出しながらプロデューサーとして活躍。映画にフィーチャーされたメローな曲がヒットし、当時 クリスタルだった田中康夫がAORと勘違いして絶賛というちょっと恥ずかしい過去もあり。)、ガイ・クラーク(!)(テキサス出身のSSW。かなり通好みの渋いカントリーを歌う。「汽車を待つ無法者のように」で有名)などの名も。そして録音はニュー・オーリンズ。要するにナッシュビルのミュージシャンを引き連れてのニューオーリンズ録音という訳で、汎アメリカンな音にしようという狙いもあるのですね。

 あと最後の曲「Boy from Tupelo」、最初はエルビスの(不在の)ことを歌った曲だと思っていたのですが、これはグラム・パーソンズとエルビスのことを歌った曲ですね。グラムが何をしようとしていたのか私はよく分からなくなってしまった。でもエルビスならグラムがやろうとしていたその先のことが分かったに違いないのに。という歌です。
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